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浜口陽三「14のさくらんぼ」sカラーメゾチント

薄暗い空間に浮かぶ十四のさくらんぼ。
 目を凝らすと、その空間が単なる闇ではなく、ふるびた織物のような色合いと手触りを持つ地を背景としていることが見えてくる。が、それにしても、さくらんぼが浮かんでいるのは一体どこなのだろう。
 さくらんぼは、落下していく途中にあると見えないこともない。
 しかしここには、うつろいゆく運動の一瞬ではなく、すべてが瞬時に凍り付いたような不思議な静けさのみがある。
 どこからともなく差す光が、さくらんぼの存在を鮮やかに照らし出しているが、その光自体、空間と同じくとらえどころがない。
 寡黙な浜口の作品がわれわれをひきつけてやまないのは、非現実的な時空のなかに感じ取れるものの確かな手ごたえ、手触りが、真の意味で存在の不可思議さを感じさせるからではなかろうか。
 (土田真紀 中日新聞 1994年3月18日掲載)

技法 カラーメゾチント
画寸 52.3 × 24.4 cm
制作年 1966年
限定部数 50
サイン 本人サイン
所蔵 国立国際美術館 三重県立美術館 ミュゼ浜口陽三ヤマサコレクション
予約中
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浜口陽三について

「20世紀の半ばの最も名高い、孤高ともいえる主導者」、「カラーメゾチントの新しい技法を開拓した作家」と紹介され、浜口の高度な技術から生まれる繊細で静謐な作風は、他の追随を許さず高く評価されており、世界の代表的銅版画作家の一人として広くその名を知られました。独学でメゾチント技法を探求し、そして、フランス語ではマニエル・ノワールと呼ばれ「黒の技法」を意味するこの技法に豊かな色彩を取り入れた、唯一無二の作家です。東京国際版画ビエンナーレ展以来、サンパウロ、ヴェネツィア・ビエンナーレ、ルガノ、リュブリアナ国際版画展などで受賞した。

浜口陽三の略歴