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薄暗い空間に浮かぶ十四のさくらんぼ。 目を凝らすと、その空間が単なる闇ではなく、ふるびた織物のような色合いと手触りを持つ地を背景としていることが見えてくる。が、それにしても、さくらんぼが浮かんでいるのは一体どこなのだろう。 さくらんぼは、落下していく途中にあると見えないこともない。 しかしここには、うつろいゆく運動の一瞬ではなく、すべてが瞬時に凍り付いたような不思議な静けさのみがある。 どこからともなく差す光が、さくらんぼの存在を鮮やかに照らし出しているが、その光自体、空間と同じくとらえどころがない。 寡黙な浜口の作品がわれわれをひきつけてやまないのは、非現実的な時空のなかに感じ取れるものの確かな手ごたえ、手触りが、真の意味で存在の不可思議さを感じさせるからではなかろうか。 (土田真紀 中日新聞 1994年3月18日掲載)










