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黒い円点と細くうねる線とが画面いっぱいに広がり、題名の《朝明けの河》が示すとおり、静かに流れ始める水の気配を抽象のうちに捉えている。 無数の線は一定の方向に収束することなく、絡み合い、分岐し、漂いながら、河の流れであると同時に、神経や血脈、あるいは宇宙の運動のような広がりを感じさせる。 草間彌生特有の反復と増殖の感覚が、ここではより軽やかで開かれたリズムとして現れている。 散在する黒い点は、水面に宿る光の粒のようでもあり、流れの節目を刻む生命の核のようでもある。 黒と白のみの簡潔な構成でありながら、画面は決して静止せず、視線を細部へ、そして全体へと絶えず往還させる。 河という自然の情景を直接描くのではなく、その生成し続ける運動そのものを、緻密な線と点の集積によって可視化したところに本作の魅力がある。 本作は1995年制作の版画作品である。 朝の光が差し始める水辺の清新さと、草間彌生の内的ヴィジョンに通底する無限性とが、静かな緊張感のうちに結晶した一作である。

