コンテンツを読み込み中
日本画家・平松礼二が描く《池にまう蝶》は、モネの《睡蓮》への深い共感を背景に生まれた、幻想的な水辺の情景です。平松は53歳の時に初めて接したモネの連作《睡蓮》に強い衝撃を受け、その後「モネの池」を重要なテーマとして描き続けました。 本作では、青く澄んだ池の水面に睡蓮が浮かび、その周りを蝶が軽やかに舞っています。水面に広がる群青や緑の色彩は、単なる自然描写というより、光や風、季節の気配までも映し込んでいるようです。蝶の存在によって画面には静寂だけでなく、生命の息づかいや一瞬の移ろいが感じられます。 平松礼二の作品には、蜻蛉や蝶、花々など自然の小さなモチーフがたびたび登場します。これらは単なる装飾ではなく、自然と人の感性を結びつける象徴として描かれており、軽井沢のアトリエにある“モネの庭”を模した池から多くの着想を得ています。実際にその庭には、モネ財団から譲られた睡蓮も植えられているとされています。 また、琳派を思わせる装飾性と、印象派的な光の表現を融合させた画風も平松作品の大きな魅力です。《池にまう蝶》でも、水面の揺らぎや色彩の重なりが繊細に表現され、日本画でありながら洋画的な空気感を漂わせています。大胆な構図と静かな詩情が同居する、平松礼二らしい代表的な池のシリーズの一作といえるでしょう。



