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水面にただ一羽、静かに立つ鳥の姿を描いた作品です。片脚だけで体を支え、細く淡い水色の嘴をわずかに上げたその佇まいには、周囲の物音に耳を澄ませているかのような緊張と静けさが同居しています。背から翼にかけて広がる青灰色の斑紋は、一つひとつ丹念に描き分けられ、羽毛の重なりやわずかな体温までも感じさせる仕上がりです。 鳥を取り囲むように配された水草は、青々とした葉先を画面の上へと伸ばしながら、水面には淡い影を落としています。抑えたベージュ系の色調で統一された背景が、鳥と水草の色彩を静かに引き立て、音のない水辺の時間をそのまま閉じ込めたような空気感を生み出しています。 作者の上村淳之は、上村松園を祖母、上村松篁を父に持つ日本画家の家系に生まれ、生涯にわたり花鳥画、とりわけ鳥類を主題とした制作を続けました。自邸に鳥舎を設けて数多くの鳥を飼育し、その生態を日々見つめ続けた観察眼は、本作における羽毛の質感や体の動きの自然さにも確かに息づいています。京都市立芸術大学名誉教授を務め、日本芸術院会員としても活躍した作者ならではの、生き物への静かな慈しみが伝わる一枚です。


