作品番号:0014163
阿部穣 丹頂
作品画像
作品の解説
阿部穣《丹頂》は、二尾の丹頂金魚を静かな水の気配のなかに浮かべ、その清雅な美しさと瑞祥性を、繊細な質感表現によって端正に描き出した作品です。白く透きとおるような魚体は、やわらかな光を含んでほのかに輝き、頭頂の鮮やかな紅が画面の中心に愛らしく際立っています。ひれや尾は薄絹のようにひろがり、二尾が斜めに呼応する構成によって、画面には静かな律動と品のよい奥行きが生まれています。背景の渋い青灰と金茶の交錯する質感は、水中でありながらどこか象徴的な場を思わせ、金魚の姿を単なる写生にとどめず、格調ある意匠へと高めています。丹頂金魚は、その紅白の取り合わせから吉祥や祝意を連想させる存在でもあり、本作にも可憐さとめでたさとが自然に宿っています。装飾性を備えながらも過度に華美に流れず、むしろ静謐と清澄のうちに美を結晶させた、気品ある一作です。