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ベルナール・ビュッフェは1928年パリに生まれ、わずか20歳でクリティック賞を受賞するなど、抽象表現が主流であった戦後のフランス画壇に彗星のごとく登場した画家です。 時代の潮流に逆らい、鋭い黒の輪郭線と骨太な描線によって対象の本質を浮かび上がらせる独自の具象表現を貫き、生涯にわたって高い評価を得ました。 本作「サントロペ」は、ビュッフェが深く愛した南仏の港町を描いた一点です。丘の稜線越しに広がる紺碧の海と空には、無数の細い線を重ねる特有の筆致が用いられ、静けさの中にも張り詰めた緊張感を漂わせています。手前には赤茶色の屋根が幾重にも折り重なり、教会の尖塔が画面の中心で静かに空へと伸びていきます。桟橋にはヨットが行き交い、南仏らしい穏やかな午後の光と潮の香りまでもが伝わってくるようです。 サントロペは、ビュッフェが1950年代後半に居を構えて以来、晩年に至るまで幾度となく筆を執った土地であり、彼にとって創作の原点ともいえる場所でした。 本作にも、単なる観光地としてではなく、日々の暮らしと共にあるこの港町への愛着が静かに滲んでいます。