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街角に佇む一軒のブラッスリーを描いた《昼下がり》は、岩見健二が長年見つめ続けてきたパリの日常を、穏やかなまなざしで映し出した作品です。華やかな観光名所ではなく、人々が何気なく行き交う街並みを主題とすることで、都市の暮らしに流れる静かな時間が自然と伝わってきます。 白い外壁を包むやわらかな光と、深い緑や黒を重ねた店構えの陰影が心地よい対比を生み、店内からこぼれる暖色の明かりが画面全体に温もりを添えています。スーツケースを引く人物や店先に立つ人影は、細部を描き込みすぎない軽快な筆致によって表現され、それぞれの姿が街の気配やリズムを感じさせます。厚みのある絵具の重なりや擦れを生かした絵肌からは、油彩ならではの豊かな質感も味わうことができます。 1947年大阪市生まれの岩見健二は、武蔵野美術大学卒業後、主体美術協会を中心に活動を続け、安井賞展入選や文化庁現代美術選抜展への出品などを通じて高い評価を得てきました。幾度もパリを訪れ、街に暮らす人々の息づかいや光の移ろいを描き続けてきた経験は、その作品世界の大きな魅力となっています。 本作には劇的な出来事は描かれていません。それでも、店先を通り過ぎる人々や静かに灯るブラッスリーの明かりが重なり合うことで、ふと旅先で足を止めた午後の記憶のような、親密で心安らぐ情景が生まれています。日常の一瞬を温かくすくい取った、岩見健二らしい街景作品です。