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アルフォンス・ミュシャが1902年に発表した《北極星》は、連作《月と星》を構成する四作品の一つです。月・宵の明星・北極星・明けの明星を、それぞれ女性の姿に託したこのシリーズは、装飾パネルという形式を単なる室内装飾から、精神性を宿した象徴的な芸術へと高めた円熟期の代表作として位置付けられています。 本作は、オリジナル・リトグラフをもとに制作されたミュシャ財団公認・300部限定のリクリエーション版です。財団の監修のもと、原画の繊細な色彩や線描、版画特有の質感を忠実に再現した正式な限定版であり、ミュシャが描いた装飾芸術の世界観を現代へ受け継ぐ作品となっています。 画面に描かれた女性は、夜空を見上げるのではなく、両手で小さな円を結ぶようなしぐさをつくり、その内側へ静かに視線を落としています。その慎ましい所作は、北極星という目に見える天体そのものよりも、「導き」や「不変」といった象徴的な存在を見つめる祈りにも似た印象を与えます。背後を斜めに横切る淡い光の帯は、北の空を巡る星々やオーロラを思わせる幻想的な光として画面に広がり、静止する女性と宇宙の大きな時間の流れを対比させています。エーデルワイスで縁取られた額装風の装飾も、清らかさと永遠性を穏やかに際立たせています。 ミュシャはチェコに生まれ、1894年の《ジスモンダ》によってパリで名声を築きました。その後は商業ポスターだけでなく、自然や星々を象徴的に描く装飾パネルへと表現を深化させます。《北極星》は、華やかなアール・ヌーヴォーの様式美の中に、静かな精神性と宇宙への憧れを込めた、ミュシャ芸術の成熟を物語る一作です。