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イタリア北部の古都ヴェローナを、深い群青と金の輝きで包み込んだ幻想的な夜景です。満月が静かに街を照らし、その光は蛇行するアディジェ川へと溶け込みながら、無数の窓明かりや街灯と響き合います。現実の風景をもとにしながらも、街全体がひとつの光の記憶として立ち現れるような情景は、桜井圭史ならではの詩情に満ちています。 画面を支配する青は単調ではなく、岩絵具を幾層にも重ねることで生まれる透明感と奥行きを備えています。その中で金箔や金泥の繊細な輝きが星や月光となり、静寂の夜に穏やかな生命感を与えています。赤茶色の瓦屋根がほのかに浮かび上がることで、冷たい青の世界に温もりが宿り、ヨーロッパの歴史ある街並みの趣を印象深く伝えています。 桜井圭史は1974年群馬県生まれ。東京藝術大学日本画専攻を卒業後、日本美術院を中心に活動し、前田青邨記念大賞展大賞、雪舟の里墨彩画展大賞などを受賞した実力派の日本画家です。現地で長時間スケッチを重ね、移ろう光や空気を自らの目で見つめ続ける制作姿勢を貫いており、風景の写実性だけでなく、その場に流れる時間までも画面に映し出そうとしています。 本作は、ヴェローナという歴史都市の静かな夜を、日本画の伝統的な素材と現代的な色彩感覚によって描いた一作です。月明かりに抱かれた街の穏やかな輝きが、見る人の心にも静かな余韻を残してくれるでしょう。

