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千住博の代表作《ウォーターフォール》は、実在する特定の滝ではなく、自然の本質や水の流れそのものを描いた「山水図」として生まれたシリーズです。画面上部から胡粉を重力に委ねて流し落とす独自の技法により、筆跡を超えた自然の営みを画面に定着させ、日本画の伝統と現代的な表現を融合させた作品として国内外で高く評価されています。 本作では、深い青の静かな空間を背景に、白く輝く滝が霧のような光をまといながら降り注いでいます。滝は激しく落下するというよりも、天から地へと静かに降りる光の柱のような佇まいを見せ、水面との境界は淡い霞に包まれています。無数に散りばめられた白い粒子は、水しぶきであると同時に星の瞬きにも見え、自然の風景を超えた詩的な世界を生み出しています。 千住博は1958年東京都生まれ。東京藝術大学大学院で日本画を学び、1995年にはヴェネツィア・ビエンナーレ絵画部門で東洋人初の名誉賞を受賞しました。その後もニューヨークを拠点に制作を続け、襖絵や壁画など幅広い仕事を通じて、日本画の可能性を国際的に切り拓いてきた現代日本画を代表する作家です。 わずかS3号という小品でありながら、本作には大画面にも劣らない空間の深さが宿っています。静寂のなかに絶え間なく流れ続ける水の気配は、鑑賞者の時間の感覚をゆるやかに変え、自然が持つ普遍的な美しさと永続する生命の循環を静かに感じさせてくれる一作です。