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鈴木マサハル《ピエロ》は、祝祭の華やかさと舞台が終わったあとの静けさが、一つの画面に同居する印象的な作品です。中央では後光を思わせる黄金色の帽子をまとったピエロが大きく両腕を広げ、その両脇ではサクソフォンとトランペットを奏でる道化たちが寄り添います。しかし足元には人形たちが無造作に横たわり、左奥の窓辺には影絵のような騎馬像が浮かぶことで、賑わいの奥にどこか夢幻的で物語性豊かな余韻が生まれています。 画面全体を覆う厚塗りのマチエールは、鈴木マサハルならではの魅力です。絵具を大胆に盛り上げた力強い筆致は、輪郭を揺らしながら光を受けて表情を変え、白を基調とした空間に黄色や緑、紫の鮮烈な色彩がリズムよく響き合います。写実を超えて、音楽や演劇が持つ高揚感そのものを絵肌で表現しているかのようです。 鈴木マサハルは1945年横浜市生まれ。武蔵野美術大学で学び、第一美術展奨励賞や神奈川県展最高賞を受賞したのち、フランス留学を経てサロン・ドートンヌやル・サロンに出品するなど、国内外で高い評価を築きました。厚塗りの油彩と大胆な色彩による独自の表現は、ヨーロッパの街並みや祝祭的な情景を描いた代表作にも一貫して息づいています。 本作はその作風を風景ではなく「道化」という普遍的なモチーフへと昇華した一枚です。陽気さと哀愁、現実と幻想が溶け合う舞台は、観る人それぞれの記憶や感情を静かに呼び覚まし、豊かな想像の世界へと誘ってくれるでしょう。