コンテンツを読み込み中
斎藤清の代表的なライフワーク《WINTER IN AIZU》シリーズは、故郷・会津への深い愛情から生まれた木版画の連作です。本作「WINTER IN AIZU(44)」では、雪に包まれた集落を大胆に簡潔化した造形によって、厳しくも温かな会津の冬の情景が描かれています。幼少期に会津を離れながらも、生涯にわたってその風土を見つめ続けた斎藤にとって、このシリーズは郷愁と記憶を形にした最も重要なテーマでした。 画面中央を貫く大樹と、その周囲にしなやかに枝を広げる木々は、雪の重みを受け止めながらも力強く立ち続けています。白と黒を基調とした抑制された色彩は、単なる冬景色の再現ではなく、雪がもたらす静けさや空気の澄み切った冷たさを視覚的なリズムとして表現しています。細やかな摺りによる灰色の階調が奥行きを生み、遠景の山並みや集落は、まるで記憶の中に浮かぶ風景のような柔らかな余韻を漂わせています。 左下には雪道を歩く小さな人物が配されており、広大な雪景色の中に人の営みをさりげなく感じさせます。斎藤清の作品には、こうした控えめな人影がしばしば登場し、風景に温もりと物語性を与えています。雪に閉ざされた世界でありながら、そこには暮らしの気配が確かに息づいているのです。 1907年に福島県会津坂下町に生まれた斎藤清は、独学で絵画を学び、木版画の新たな表現を切り拓いた世界的版画家です。サンパウロ・ビエンナーレでの受賞をはじめ国際的な評価を受けながらも、その創作の根底には常に会津の風土がありました。本作は、写実を超えて土地の記憶と精神性を映し出す、斎藤芸術の真髄を味わえる一枚です。