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二体の山犬が真正面から向かい合い、その間に白く咲く花を抱くように配した、緊張感と親密さが同居する作品です。 黒を主体とする鋭く細かな線が毛並みや輪郭を埋め尽くし、左には青、右には朱赤を差すことで、それぞれの存在に異なる気配と個性が与えられています。 大きく見開かれた眼は見る者を強く捉える一方、互いの額を寄せ合うような構図からは、対峙というよりも、言葉を超えて心を通わせる神聖な儀式のような趣が感じられます。 画面中央に咲く淡い花は、黒々とした山犬の姿のなかでひときわ柔らかな光を放ち、題名にある「芽吹く里山の春」を象徴するかのようです。 さらに随所に配された金色の渦文様が装飾的な輝きを添え、野性的な生命力のなかに祈りにも似た静かな荘厳さを生み出しています。 小松美羽は、神獣や守護獣などの霊的存在を通して、人と自然、目に見える世界と見えない世界とのつながりを描いてきた現代美術家です。 本作では、里山に息づく生命への眼差しと神獣への畏敬が、春の訪れを告げるような清新な気配のうちに重なり合い、力強い線描の奥から温かな生命の息吹が立ち上がってきます。