コンテンツを読み込み中
静かな佇まいのなかに、花と器それぞれの存在感を際立たせた、五味悌四郎らしい静物画です。備前焼の壺に生けられた椿は、華やかさを誇示するのではなく、素朴な器との調和のなかで慎ましく咲いています。白い花弁のやわらかな表情と、深い緑の葉、そして使い込まれたような備前壺の落ち着いた色調が呼応し、画面には穏やかで品のある空気が漂います。 五味悌四郎は、花や果実、器などを題材とする静物画を数多く残し、対象の質感や量感を丁寧に捉える写実表現で知られています。東京美術学校で学び、一水会を中心に活動した後、1964年には渡欧してパリのグラン・ショミエールで研鑽を積み、ル・サロン展などでも受賞しました。そうした経験を重ねながらも、帰国後の作品では日本の暮らしに根ざした器や草花を大切に描いています。 本作でも、単に椿の美しさを写し取るのではなく、花を受け止める器との取り合わせによって、静物そのものが持つ時間の深みを感じさせます。控えめな構成だからこそ、日常のなかにある美を静かに味わえる一作です。

