作品番号:0017377

有元利夫 或る予感

作品画像

有元利夫「或る予感」リトグラフ

作品の詳細

技法

リトグラフ

画寸
42.5 × 33.0 cm
額寸
66.5 × 54.5 cm
レゾネ No.
Print.56
制作年
1983年
限定部数
83
在庫状況
予約中
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作品の解説

有元利夫が描く人物には、現実の誰かを写した肖像というよりも、時間や記憶の彼方から静かに現れた存在のような趣があります。本作《或る予感》もまた、その独特の世界観が凝縮された一作です。大きく広がる黄金色のアーチ状の空間を背景に、白い衣をまとった人物が静かに佇む姿は、見る者を日常から切り離し、詩的な静寂へと誘います。
画面を支配する柔らかな黄色は、光そのものというより、内側から湧き上がる気配や精神性を象徴しているかのようです。一方で、衣の青い帯や髪の色が画面を引き締め、簡潔な色彩構成のなかに確かな緊張感を生み出しています。人物は正面を向きながらも、どこか遠くを見つめているようであり、その視線や控えめな表情には「或る予感」という題名が示す、言葉になる前の感覚や未来への気配が静かに宿っています。何かが始まろうとする瞬間なのか、それとも過ぎ去った時間を回想しているのか──明確な物語を語らないからこそ、鑑賞者それぞれの記憶や感情が自然と重なり合う作品です。
有元利夫(1946–1985)は東京藝術大学在学中にイタリアでフレスコ画に深い感銘を受け、日本の古画や仏画への研究も重ねながら、油彩でありながら壁画のような落ち着いた質感を持つ独自の画風を確立しました。1978年に安井賞展で特別賞、1981年には安井賞を受賞し、将来を大いに期待されながらも38歳という若さでこの世を去っています。限られた制作期間のなかで残された作品群は、時代を超えて多くの人々を魅了し続けています。
本作は、その詩情豊かな作風を版画で見事に表現した代表的なリトグラフの一つです。絵肌には有元ならではの柔らかなマチエールが丁寧に再現され、絵画作品に通じる温もりと静謐な空気が息づいています。華やかさを競うのではなく、心の奥深くに静かに響く美しさを湛えた、有元利夫芸術の本質に触れることのできる一枚といえるでしょう。

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