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パリ・セーヌ川越しに望むノートルダム大聖堂を描いた鈴木マサハルの一作です。画面奥にそびえる2本の塔と鐘楼、緑青色の屋根が、厚く盛られた絵の具とペインティングナイフの筆致によって力強く立ち上がり、周囲の並木や橋、行き交う船とともに、パリの午後の光と空気の揺らぎを伝えてきます。 手前の遊歩道から橋、大聖堂へと視線が奥へ導かれる構成は、実景の写生というより、色とマチエールによって都市の躍動感を再構築しようとする作家の姿勢をよく表しています。 鈴木マサハルは1945年に横浜で生まれ、武蔵野美術大学で学んだのち、1977年にフランスへ留学し、パリ美術学校で人物デッサンを学びました。 滞仏中にパリの風景の魅力に開眼し、以後は都市や自然を主題とした風景画へと軸足を移していきます。翌年にはサロン・ドートンヌ展、続いてル・サロン展にも出品を重ね、フランスの美術界でも研鑽を積みました。帰国後は全国の百貨店や画廊で個展を精力的に開催し、原色を大胆に用いた重厚な油彩表現で幅広い支持を集めています。 本作でも、青と緑を基調にしたセーヌ川の水面と、赤や黄が差し込まれた河岸の情景が呼応し合い、ナイフならではの肉厚な質感が画面全体に生命感を与えています。F3号という小ぶりな画面に、パリという街の記憶と光を凝縮した一点です。