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本作「流」は、岩にせき止められながらも力強くうねる水の流れを、緻密な線描によって描き出した作品です。 画面中央には水を割るように顔を出す岩塊が配され、そこにぶつかった水流が幾重にも渦を巻き、複雑な波紋を織りなしています。右手前へと勢いよく流れ落ちる水は、繊細な線の集積によって透明感と速度感を同時に表現し、左上に淡く広がる青緑の色調が、画面全体に静けさと奥行きを添えています。単なる情景描写にとどまらず、自然が刻一刻と姿を変えていく様相を、静止した画面の中に凝縮させているところに、本作の魅力があります。 田淵俊夫は1941年、愛知県に生まれた日本画家です。東京藝術大学で学び、同大学の教授を務めるなど、後進の指導にも力を注いできました。日本美術院の同人として活躍し、日本芸術院会員にも選出されています。 樹木や水面、山河といった自然のモチーフを一貫して描き続け、対象を写実的に捉えながらも、線と余白によって空気や時間の流れを感じさせる独自の画風を確立しました。本作においても、水という捉えどころのない存在の動きを、確かな観察眼と卓越した描写力によって見事に定着させており、作家の真骨頂を伝える一点といえます。



