作品番号:0017323

児玉幸雄 エッフェル塔遠望

作品画像

児玉幸雄「エッフェル塔遠望」水彩

作品の詳細

技法

水彩

画寸
27.1 × 24.1 cm
額寸
42.0 × 39.5 cm
鑑定

東美鑑定評価機構鑑定証

在庫状況
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作品の解説

フランス・パリを生涯にわたって愛し続けた児玉幸雄にとって、エッフェル塔は単なる観光名所ではなく、街の空気や時間、そして文化そのものを象徴する存在でした。本作《エッフェル塔遠望》は、その象徴をあえて画面中央に大きく据えるのではなく、遠景に控えめに配し、広々とした空と静かな街並みの中に溶け込ませた、実に児玉らしい水彩作品です。
描かれているのは、高台のテラスからパリ市街を見晴らす穏やかな風景です。左手には端正な建築物、手前にはリズミカルに並ぶ糸杉や植栽、右にはクラシカルな欄干と大きな植木鉢が配され、それらが自然な奥行きを生み出しています。その先には淡く霞む街並みが広がり、地平線の彼方にはエッフェル塔のシルエットが静かに姿を現します。画面全体に漂う余白の美しさが、都市の喧騒とは対照的な、ゆったりとした時間の流れを感じさせます。
本作で特に印象的なのは、水彩ならではの透明感を最大限に生かした色彩表現です。空や石造りのテラスにはごく淡いブルーが薄く重ねられ、建物や街並みも最小限の筆致によって軽やかに描き留められています。一方で、前景の糸杉や植木鉢の深い緑が画面を引き締め、静謐な構成の中に心地よいアクセントを与えています。描き込みを抑えながらも、光や空気の存在を巧みに表現する児玉の卓越した感覚が存分に発揮された一枚といえるでしょう。
児玉幸雄は、パリの名所そのものよりも、その街に流れる光や季節、そこに暮らす人々が共有する空気感を描くことを大切にしました。本作でもエッフェル塔は遠く控えめに描かれていますが、それゆえに「パリらしさ」がかえって豊かに感じられます。都市を象徴する建造物を風景の一部として自然に溶け込ませる構成は、長年この街を見つめ続けた画家だからこそ到達できた境地といえるでしょう。
約27センチ四方という飾りやすい画面の中に、パリの澄み切った空気と穏やかな時間が凝縮された本作は、見る人の心を静かに解きほぐしてくれる一枚です。児玉幸雄が愛したパリの詩情を、水彩ならではの軽やかさと洗練された色彩で味わうことのできる、気品あふれる佳作としておすすめできる作品です。

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