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本作は、花鳥画の近代化に多大な貢献を果たし、1984年に文化勲章を受章した上村松篁による木版画「春秋花鳥四題」のうちの一図、「タデ・常鶲」です。 画面いっぱいに弧を描くように伸びたタデの繊細な茎が、作品全体の骨格を形成しています。赤紫色の小花が連なる穂と、秋の深まりとともに黄色へと色づいた葉が、淡い砂色の地の上に静かに浮かびあがり、晩秋の野の情趣を漂わせます。画面中央にはジョウビタキの雄が凛と佇み、灰青色の頭部、漆黒の顔、鮮やかなオレンジ色の胴と尾羽が、周囲の赤と黄の彩りと相まって、澄んだ秋の空気を感じさせます。 松篁は「鳥の生活を理解しなければ、鳥は描けない」と語り、奈良のアトリエに千羽を超える鳥を飼って生涯観察を続けたことで知られています。本作においても、ジョウビタキの体つきや羽の質感は徹底した写生に裏打ちされており、標本的な正確さを超えた「生きた鳥」としての存在感が画面に息づいています。過度な装飾を排した簡潔な構図のなかに、鳥と草花がともに秋という季節を生きる気配が静謐に満ちており、松篁芸術の真髄を伝える一葉です。