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淡い金色を帯びた空を背景に、白梅の枝へと寄り添う二羽の鷽(ウソ)。ふっくらと丸みを帯びた体躯、黒い頭部に橙色がかった喉元――画面手前の一羽の彩りが、まだ冷気の残る早春の空気に、静かな温もりを灯しています。奥に佇むもう一羽は白みがかった灰色の羽衣をまとい、二羽の間に柔らかな対比をもたらしています。枝々に連なる白梅の花は丁寧に摺り重ねられ、花芯の細い線や蕾の橙色、萼の緑が細部まで美しく表現されています。 上村松篁(1902-2001)は、近代美人画の大家・上村松園を母に持ち、花鳥画の世界で独自の境地を切り開いた日本画家です。奈良のアトリエに禽舎を設け、千羽を超える鳥を飼育・観察し続けたことはよく知られており、「鳥の生活を理解しなければ、鳥は描けない」という言葉が残るほど、写生への姿勢は徹底したものでした。伝統的な円山四条派の写実を礎としながら、近代的な構成と清澄な色彩感覚を加えた独自の花鳥画を確立し、1984年には文化勲章を受章しています。 本作「春秋花鳥四題」は、限定200部で制作された木版画のシリーズ作品のうちの一点です。日本画の原画が持つ繊細な筆致や色の階調を、木版の技法によって丁寧に再現しており、松篁の花鳥表現の魅力を版画という形式で手もとにお届けします。梅の清雅な白と鷽のやわらかな色彩が織りなす早春の情景は、床の間や和室はもちろん、洋室にも品よく映える一作です。

