作品番号:0017278

杉山寧 山百合

作品画像

杉山寧「山百合」水彩

作品の詳細

技法

水彩

画寸
57.6 × 38.8 cm
額寸
74.5 × 56.0 cm
制作年
1983年
鑑定

東美鑑定評価機構鑑定証

在庫状況
売却済

作品の解説

日本画壇を代表する巨匠・杉山寧(1909–1993)が描いた本作《山百合》は、身近な花を題材としながら、作家ならではの洗練された美意識と静謐な精神性が感じられる水彩作品です。杉山は戦後日本画の革新を担った「創造美術」「新制作協会」の中心的存在として知られ、自然の生命感を独自の造形感覚によって表現しました。本作にも、その芸術観が端的に表れています。
画面中央には、青磁を思わせる淡い水色の花器に活けられた一輪の山百合が描かれています。大きく開いた白い花弁には繊細な紅色の斑点が散りばめられ、雄しべの鮮やかな橙色が静かな画面に印象的なアクセントを与えています。一方で背景はあえて簡潔に処理され、余分な要素を排した構成によって、山百合そのものの存在感が際立っています。
杉山寧の作品には、自然を単なる写生として捉えるのではなく、その内に宿る気配や生命の律動を表現しようとする姿勢が一貫して見られます。本作でも、花弁の柔らかな起伏や葉の伸びやかな線が丁寧に描かれており、花が持つ一瞬の美しさと生命力が静かに伝わってきます。水彩ならではの透明感ある彩色は、対象の形態を軽やかに包み込み、見る者に清澄な印象を与えます。
また、花器の爽やかな青色と山百合の純白との対比は極めて美しく、色彩を抑制しながらも豊かな調和を生み出しています。その構成には日本画的な余白の美意識が感じられ、簡潔でありながら深い情感を湛えた作品世界が築かれています。
1983年に制作された本作は、円熟期の杉山寧が日常の自然に向けた静かなまなざしを示す佳品といえるでしょう。華やかさを競うのではなく、一輪の花が持つ気高さと生命の尊さを見つめた作品であり、鑑賞するたびに心を穏やかに整えてくれる魅力を備えています。巨匠の感性が凝縮された本作は、杉山芸術の本質に触れることのできる貴重な一点として、コレクションにもふさわしい作品です。

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