作品番号:0017276
南桂子 蝶々
作品画像
作品の解説
青を基調とした画面のなか、曲線を描く幹が画面中央にすっと伸び、その先には赤と青紫の花々が鈴なりに連なる丸い樹冠が広がっています。背景は細かな点描を重ねて描かれており、その無数の筆触が生み出す律動感は静かな夜気がかすかに震えているかのようです。 そして幹のほぼ中ほどで羽を休めている蝶は、どこか夢で見た生き物のような非現実感をたたえており、樹と蝶のあいだにひそかな対話が生まれているようにも感じられます。 南桂子は富山県高岡市に生まれ、戦後に油彩を学んだのち、夫である銅版画家・浜口陽三とともに1954年にパリへ渡りました。以来、少女・木・鳥といったメルヘン的なモチーフを繊細な銅版画で描き続け、「銅版詩」とも称される叙情的な作風で国際的に高く評価されました。ユニセフのグリーティングカードやニューヨーク近代美術館のクリスマスカードにも採用され、その名は世界に広まりました。 この《蝶々》は1971年(昭和46年)の制作で、南がパリを拠点に銅版画家として活躍していた円熟期に描かれた油彩作品です。のちの版画作品と同様、木と小さな生き物を中心に据えた親密な世界が広がっており、彼女の想像力の源泉を静かに伝える一点といえます。メルヘン的な夢想と確かな絵画的技量が溶け合ったその画面は、見る者の心に懐かしくも澄んだ余韻を残してくれます。