作品番号:0017272
古吉弘 KATHR PINE
作品画像
作品の解説
黒いシルクハットを深くかぶり、静かにこちらを見つめる少女——古吉弘が描いたこの小品は、その小さな画面に似つかわしくないほどの、深い余韻をたたえた作品です。 縦11.5cm、横8.5cmというきわめて小さな画面は、かまぼこ型(アーチ型)の枠によってさらに内側へと凝縮され、まるで古い写真や細密画のように、鑑賞者の視線を中央の人物像へとぐっと引き寄せます。漆喰を思わせる淡いクリーム色の背景から浮かび上がる少女は、全身を黒ずくめの装いで固め、手には細い杖を握っています。青みがかった瞳には、幼さと意志の強さが不思議に同居しており、その眼差しはどこか挑むようでもあり、夢を見ているようでもあります。 シルクハットや黒のフロックコート風の衣装は、19世紀ヨーロッパの装いをまとわせることで、作品全体に時を超えた物語性を漂わせています。少女がシルクハットをかぶるという設定は性差を越えた自由な精神を象徴しているようにも読め、古吉弘が人物画に込める「内なる世界」への問いかけが静かに伝わってきます。 手のひらに収まるほどの小品でありながら、飾る空間に凛とした緊張感をもたらす——古吉弘の確かな筆力と、人物の内面に迫る眼差しが光る一点です。