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児玉幸雄の新着作品を
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パリの街角に佇む一軒のカフェ。クリーム色のオーニングに赤い縁取りで「CAFÉ DU BON COIN」と記されたその店先には、木漏れ日の中でくつろぐ人々の姿があります。児玉幸雄がキャンバスに刻んだのは、観光地の華やかさではなく、パリの日常に息づく、穏やかで親密な時間の流れです。 画面中央に堂々とそびえる街路樹が、この作品の骨格をなしています。緑の葉叢は生命力にあふれながらも、周囲の建物やカフェのテラスと調和し、都市の中に自然が溶け込んだパリらしい風景を作り出しています。樹皮の質感、葉の揺らぎ、その向こうに透けるオスマン様式の石造り建築——画家の筆は細部へのこだわりを示しながらも、全体として軽やかな空気感を失いません。 テラス席に点在する人物たちは、具体的な顔かたちを持たず、色彩の断片として描かれています。青いジャケット、赤いシャツ、白いテーブル。それらが集まって醸し出すのは、特定の誰かの物語ではなく、パリという都市に普遍的に流れる「カフェの午後」という情景です。見る者は自然と、その場の一隅に座っているような感覚を覚えることでしょう。 油彩SMという小さな画面に、児玉はこれだけ豊かな情報と空気を封じ込めました。厚みのある絵具の重なり、ナイフや筆の跡が生む躍動感ある表面——間近で鑑賞すると、その筆致の大胆さに改めて驚かされます。しかし一歩引けば、すべてが見事に調和し、パリの一角を切り取ったスナップショットのように眼前に広がります。 日常の美しさを、確かな技術と詩的な感受性で描き続けてきた児玉幸雄。本作はその真骨頂ともいえる一点です。飾る場所を選ばないSM判のサイズも魅力のひとつ。パリへの憧れを、毎日の暮らしのそばにそっと置いていただける作品です。

