コンテンツを読み込み中
有元利夫《SOMETHING BLACK 版画集「一千一秒物語」より-96》は、静かな正面性をもって坐す人物の前に、黒い細線の束を立ち上がらせることで、可視のかたちと内なる気配とを、簡潔な構成のうちに印象深く結び合わせた作品です。 淡い色調で抑えられた画面には、ほのかな紅を帯びた顔立ちと、静かに据えられた身体の輪郭がやわらかくあらわれ、その前景に置かれた幾何学的な器から、無数の黒線が扇状にひろがっています。この「黒いもの」は、草木や糸、あるいは思念の立ちのぼりのようにも見え、明確に限定されないからこそ、画面に詩と寓意の余白をもたらしています。 床の格子や器の織物のような細密さが、人物の静けさと響き合い、全体には夢と沈黙のあわいにあるような、独特の時間が流れています。有元利夫らしい静謐と象徴性が凝縮された、きわめて魅力的な一葉です。
有元利夫の新着作品を
LINEでお知らせします。