作品番号:0016834
五味悌四郎 山椿
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作品の解説
五味悌四郎は、日本的な静物表現を油彩によって追求し、花や果実を通して沈静した美を描き続けた洋画家である。本作《山椿》では、淡い灰色の背景に、端正な白磁の花器と瑞々しい山椿が簡潔に配され、余計な要素を排した構成が際立つ。肉厚な花弁の紅と、光を含んだ深緑の葉は、写実を基盤としながらも抑制された色調によって静かな緊張感を保っている。卓上に落ちた一輪の花と葉が、時間の経過や生命の儚さを暗示し、画面に詩的な余韻を添える。五味特有の柔らかな筆致と繊細な陰影表現は、花の存在感を誇張することなく、見る者の心に静かに沁み入る。本作は、五味悌四郎の円熟した静物画の魅力を端的に示す佳品である。