作品番号:0016758
八木幾朗 桜
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作品の解説
八木幾朗による本作《桜》は、満開の華やぎそのものではなく、散りゆく花びらが水面を流れゆく一瞬に目を向けることで、春の美しさの奥にある静かな無常を描き出した一作です。やわらかな緑の水面を斜めに横切る黒い枝の線は、簡潔でありながらリズミカルで、そこに浮かぶ花びらの白が軽やかな気配を添えています。画面上部に残る木の根元と、流れに委ねられた花びらとの対比によって、咲くことと散ることが一つの季節のなかにあることが詩情豊かに示されています。八木幾朗は、自然の姿を写し取りながらも、形を整理した明快な構成と抑制ある色彩によって、対象の情趣を静かに際立たせる魅力があり、本作にもその資質がよく表れています。桜という親しまれた題材を、風景描写にとどまらず、時の移ろいそのものを感じさせる清澄な画面へと昇華しているところに、この作品の大きな魅力があるでしょう。