作品番号:0016252
伊藤和子 遠い日のあかり
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作品の解説
伊藤和子による本作《遠い日のあかり》は、窓辺に置かれた燭台の小さな炎を通して、静かな時間の流れと、胸の奥に残る記憶のぬくもりを描き出した、抒情豊かな一作です。画面中央に灯る蝋燭の火は、決して大きくはないものの、夕暮れの淡い空と冬枯れの木立を背にして、いっそうあたたかく、確かな存在感を放っています。古びた窓枠や燭台の金属の質感には、長い歳月に磨かれたような味わいがあり、そこにともる灯りが、単なる室内の情景を超えて、懐かしい思い出や過ぎ去った日々の面影をそっと呼び起こします。伊藤和子は、身近な静物や窓辺の光景に、静けさのなかの感情や物語を託して描くことに魅力のある画家ですが、本作にも、日常の片隅に宿る詩情が丁寧に息づいています。小さな炎がもたらすぬくもりと、夕刻の澄んだ寂しさとが美しく響き合い、見る者の心にやさしい余韻を残す作品といえるでしょう。