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20世紀前半、パリを拠点に「エコール・ド・パリ」を代表する画家として国際的な評価を築いた 藤田嗣治。乳白色の肌で描かれた裸婦で広く知られる一方、晩年には子どもや少女を主題とした作品にも深く取り組み、静かな精神性をたたえた人物像を数多く残しました。本作《少女像》も、その繊細な人物表現を木版画という技法で味わえる佳作です。 画面に佇む少女は、長く波打つ髪を肩いっぱいに垂らし、穏やかな眼差しをわずかに横へ向けています。表情には笑みも憂いも強く表されず、幼さと落ち着きが同居した、不思議な静けさが漂います。胸元より少し下で、指先をそっと重ねたり触れ合わせたりする仕草は、ごく自然な身振りでありながら、少女の内にある繊細な感情を静かに物語っているようです。 衣服を包む柔らかな襞や、髪の流れを描く流麗な輪郭線には、藤田ならではの卓越した素描力が息づいています。木版でありながら、墨の濃淡を思わせる繊細な階調が生かされ、単色の画面の中に豊かな空気感と奥行きが生まれています。装飾的な背景を設けない構成だからこそ、少女の存在そのものが際立ち、鑑賞者は自然とその静かな佇まいへと引き込まれます。 油彩だけでなく、銅版画やリトグラフ、木版画など版画表現にも意欲的に取り組んだ藤田嗣治。本作は、華やかさよりも内面の気配を大切にした晩年の人物像を象徴する一枚として、時代を超えて変わらない静謐な美しさを湛えています。