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ヴァイオリンを手にした女性の姿を描いた、ルイ・イカール「ワルツの余韻」。1938年に制作されたエッチングです。 赤みを帯びた巻き毛を結い上げた女性が、白いフリルの肩掛けと黒繻子のドレスをまとい、けだるく身を横たえながらヴァイオリンを携えています。弓を持つ手はゆるやかに垂れ、演奏を終えたばかりの静かな余韻を感じさせる構図です。背景は輪郭を溶かすように煙るタッチで仕上げられ、黒繻子の重厚な陰影と対比しながら、画面全体に音楽的な流動感を与えています。 タイトルの「余韻」が示す通り、本作が描くのは演奏そのものの躍動ではなく、旋律が消えたあとに残る静寂の時間です。それでいて女性はこちらへと真っ直ぐに視線を投げかけ、口元にはどこか不敵な微笑みをたたえており、単なる余韻の情景に留まらない緊張感を画面にもたらしています。 イカールが繰り返し描いた、装飾的な華やかさと内面の強さとが表裏一体となった女性像は、本作においても線描と濃淡だけで見事に成立しており、アール・デコ期のパリが持っていた優美さと気品を今に伝えています。